タクティリス~正美編 第三話
施術日記
小説「タクティリス」については、こちらをご覧ください。
タクティリス~正美編 第三話
秋山正美。四十五歳。大学生を筆頭に三人の子供を持つパート勤めの主婦。子供の内訳は、二十歳の長男優、十六歳の長女茜、七歳の次男悟となる。結婚して二十二年が経過した。夫は十歳年上で大学を出て就職したが、正美の妊娠と同時に今の新築戸建住宅を建築販売する会社に転職した。三流大学でのサラリーマンの給料では家族を養っていくことなど出来ないという判断からだ。
今日は一番下の息子の小学校の運動会だ。進んで作ろうと思った子供ではなかったが、正美にとってはかけがえのない存在となった。小学校の運動会は長女の茜が卒業してから四年ぶりのことで、恒例のお弁当づくりにも力が入る。今回は、なぜか優の彼女、チッチも参加するということで、余計におにぎりを作ることとなった。
炊きたてのごはんの甘くむせたような香りを嗅いだ瞬間に、ふと昨日のMとの時間が蘇ってきた。
「正美さん、おはようございます」
玄関先で優の彼女、チッチの元気のいい声が聞こえた。
チッチは、母になるかも知れない彼氏の母親のことを名前で呼ぶ。屈託の無い笑顔と遠慮をしないところが、息子の彼女として受け入れている最大の理由だ。自分もチッチのような性格を持ち合わせていたら、義母との関係が違っていたはずだろうと思うことが何度もある。
「チッチ~、おはよう~」
奥から今日の主役である次男悟が、体操服のズボンを履きながら玄関先のチッチのところに飛び跳ねて行った。秋山家全員が彼女のことをチッチと呼んでいる。初秋の澄みきった青空は、運動会ではなく、彼女のために用意されているかのようだ。
四年ぶりの運動会ということもあって、墓参りや正月しか顔を合わせることがない義母も来ることになっている。同じ大阪市内に家があるので、その気になればいつでも会えるはずなのに、正美は年に数回の行事さえわずらわしいと感じていた。主人が頻繁に実家に行っていることも原因の一つなのかも知れないが、それ以上に初めて会った時に受けた印象が、二十二年経った今でも消えていないせいだ。
嫁として妻としての正しい姿というものを結婚するかどうかもわからない状況の中で、こんこんと説明された。その時の義母の満面の笑顔は、いまも時々夢に出てくる。結婚式では、秋山家に嫁いだという実感とは別に思い鎖を足につながれたような感覚を持った。
悟の学校の運動会は、自由に場所取りができるので、まるで花見客で埋め尽くされたかのような賑わいがある。主賓席が設けられたテントを正面にして、競技用のトラックから少し離れた日陰にゴザを敷くのが、秋山家の鑑賞スタイルだ。今年八十五歳になる義母には、キャンプ用の椅子を用意している。義母のかたわらで気遣う正美は、女王様の横にいる下女のようにみえる。
生徒たちの入場行進が始まるとビデオカメラを携えた夫、優とチッチ、そして長女の茜が悟の晴れ舞台を見に一斉にトラックの方へ移動した。
「博史とは最近どうなの?」
突然、思いもよらない質問が、場違いな場所とタイミングで投げかけられた。
正美は質問の意味がわからなかった。「どう?」と聞かれてなんと答えればいいのだろうか。会話もあまりなく悟が生まれてからの七年間は、一度もセックスをしていませんとでも答えれば満足するのだろうか。
「最近は、仕事が忙しいようで帰宅も遅くなっていて体が心配です」
正美は、当たり障りの無い事実だけを答えた。
「居心地が悪いと家にも帰りたくなくなるからね」
義母は、独り言のようにつぶやいたが、悟の入場行進曲の音に消されることなく正美の心に突き刺り、二人はそれから無言で前を向いていた。《第四話へ》
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タクティリス~正美編 第三話
秋山正美。四十五歳。大学生を筆頭に三人の子供を持つパート勤めの主婦。子供の内訳は、二十歳の長男優、十六歳の長女茜、七歳の次男悟となる。結婚して二十二年が経過した。夫は十歳年上で大学を出て就職したが、正美の妊娠と同時に今の新築戸建住宅を建築販売する会社に転職した。三流大学でのサラリーマンの給料では家族を養っていくことなど出来ないという判断からだ。
今日は一番下の息子の小学校の運動会だ。進んで作ろうと思った子供ではなかったが、正美にとってはかけがえのない存在となった。小学校の運動会は長女の茜が卒業してから四年ぶりのことで、恒例のお弁当づくりにも力が入る。今回は、なぜか優の彼女、チッチも参加するということで、余計におにぎりを作ることとなった。
炊きたてのごはんの甘くむせたような香りを嗅いだ瞬間に、ふと昨日のMとの時間が蘇ってきた。
「正美さん、おはようございます」
玄関先で優の彼女、チッチの元気のいい声が聞こえた。
チッチは、母になるかも知れない彼氏の母親のことを名前で呼ぶ。屈託の無い笑顔と遠慮をしないところが、息子の彼女として受け入れている最大の理由だ。自分もチッチのような性格を持ち合わせていたら、義母との関係が違っていたはずだろうと思うことが何度もある。
「チッチ~、おはよう~」
奥から今日の主役である次男悟が、体操服のズボンを履きながら玄関先のチッチのところに飛び跳ねて行った。秋山家全員が彼女のことをチッチと呼んでいる。初秋の澄みきった青空は、運動会ではなく、彼女のために用意されているかのようだ。
四年ぶりの運動会ということもあって、墓参りや正月しか顔を合わせることがない義母も来ることになっている。同じ大阪市内に家があるので、その気になればいつでも会えるはずなのに、正美は年に数回の行事さえわずらわしいと感じていた。主人が頻繁に実家に行っていることも原因の一つなのかも知れないが、それ以上に初めて会った時に受けた印象が、二十二年経った今でも消えていないせいだ。
嫁として妻としての正しい姿というものを結婚するかどうかもわからない状況の中で、こんこんと説明された。その時の義母の満面の笑顔は、いまも時々夢に出てくる。結婚式では、秋山家に嫁いだという実感とは別に思い鎖を足につながれたような感覚を持った。
悟の学校の運動会は、自由に場所取りができるので、まるで花見客で埋め尽くされたかのような賑わいがある。主賓席が設けられたテントを正面にして、競技用のトラックから少し離れた日陰にゴザを敷くのが、秋山家の鑑賞スタイルだ。今年八十五歳になる義母には、キャンプ用の椅子を用意している。義母のかたわらで気遣う正美は、女王様の横にいる下女のようにみえる。
生徒たちの入場行進が始まるとビデオカメラを携えた夫、優とチッチ、そして長女の茜が悟の晴れ舞台を見に一斉にトラックの方へ移動した。
「博史とは最近どうなの?」
突然、思いもよらない質問が、場違いな場所とタイミングで投げかけられた。
正美は質問の意味がわからなかった。「どう?」と聞かれてなんと答えればいいのだろうか。会話もあまりなく悟が生まれてからの七年間は、一度もセックスをしていませんとでも答えれば満足するのだろうか。
「最近は、仕事が忙しいようで帰宅も遅くなっていて体が心配です」
正美は、当たり障りの無い事実だけを答えた。
「居心地が悪いと家にも帰りたくなくなるからね」
義母は、独り言のようにつぶやいたが、悟の入場行進曲の音に消されることなく正美の心に突き刺り、二人はそれから無言で前を向いていた。《第四話へ》
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